全国高等学校総合体育大会 3回戦

松蔭 三好
2 1 前半 0 3
1 後半 2
0 延前 1
0 延後 0
SH:シュート数 GK:ゴールキック数 CK:コーナーキック数 FK:フリーキック数
日時 2015/05/23
Kick off 13:15
試合会場 愛知学泉大グランド

先週に引き続きインターハイ愛知県大会の舞台は豊田市の愛知学泉大学人工芝グランド。そして、対戦相手はリーグ戦の第2節で2-5と苦渋を舐めさせられた三好高校。いや、過去まで遡れば、2012年選手権3回戦(0-1敗退)、2013年選手権3回戦(1-1PK敗退)とことごとく松蔭の前に立ちふさがってきた相手である。対戦成績は過去3年で2勝3敗2分(1PK負け)とやや松蔭の分が悪いが、力の差はほとんどない。今日も1点を争うようなゲームになることは想像するには難しくない。
コンディションは絶好の快晴。ゲーム開始前から両校の大応援団の昂ぶりが、ピッチを挟んだ反対サイドまでも伝わってきそうだ。最高のステージが用意され、舞台に上がった22人の戦士達は静かに幕が上がるのを待った。

センターマークにボールがセットされ一瞬の静寂の後、ホイッスルの合図ともに両軍の大応援団が雄叫びを挙げた。両校がこの一戦の重みを知り、相手の強さをリスペクトするが故の緊迫感。選手はそのすべてを背負いながら、今日までやってきたことの全てを表現する。大応援団の激しさとは裏腹に、ピッチでは静かな、それでいてヒリヒリするような競り合いが続いている。ゲーム展開は今さら書くまでもないが、パスとドリブルで細かくつなぐ松蔭に対して、縦に速い球出しでシンプルに攻める三好。やはり1点を競り合うような様相を呈してくる。すると前半が半分ほど経過した頃、三好ディフェンスの背後のスペースにふわりと送られたパスに、松蔭FWが追いつき空中でトラップ、それを角度のない難しい位置からボレーでGKの頭を越えてネットを揺らす。美しいゴールが決まり松蔭先制。松蔭大応援団が沸き立つと、三好も負けじと歌う歌う、まだまだ勝負の行方はわからない。結局、前半はこのまま両者譲らず1-0と松蔭リードのまま終了。1点リードはしているものの、三好は爆発力があるだけに、後半もしっかりと集中しなければならない。ベンチに引き上げてくる選手の表情を見れば、誰もがそのことは十分に承知していることがわかる。両軍の大応援団も暫しの休戦状態を迎える。

後半は開始からやはり三好がプレシャーを高めてくる。これはリーグ戦で織り込み済みだが、それでも三好の圧力は想像以上に強く、前半のように松蔭ポゼッションの時間が長くは続かない。すると、スピードに乗った三好FWが松蔭ディフェンスの裏に抜け出しゴール。ゲームは振り出しに戻ってしまう。勢いに乗せてしまうと怖い相手、松蔭はここが踏ん張りどころ。しかし、三好の勢いは止まらず、ついには逆転のゴールを許してしまう。三好の屈強な守備を考えれば、もうこれ以上の失点は許されない。応援団の声も一段とテンションがあがり始める。ここから先は技術・体力よりも精神力の戦い。少しでもあきらめの気持ちが芽生えれば、それは負けに直結する。交代選手を使いながらチームを鼓舞し、両チームが持てる力を振り絞って1つのボールを追い続ける。逆転を許してからは松蔭の前への意識が上がり、幾度となく三好ペナルティエリア付近まで攻め込むがなかなか決定的なシーンを作ることができない。三好も体を張ってゴールを守る。しかし、得点の瞬間は意外な形で訪れる。中盤右サイドでボールをキープした松蔭MFが、ゴール前に長いボールを送ると、脱兎のごとく落下地点に走り込んだ松蔭左サイドのMFがジャンピングボレーであわせ同点!途中出場から富田戦では2得点、そしてこの日も値千金の同点弾とこの大会のラッキーボーイが誕生。遂に松蔭が追いつく!
同点になってからは松蔭が勢いに乗って攻めるが、決着はつかず勝負は延長戦へと持ち越された。

炎天下のなか、足が痙る選手も出始めるが、短い休憩の間にマッサージなどでコンディションを整え10分ハーフの延長戦が始まった。選手達の疲労はすでにピークに達しているはずだが、それでもルーズなプレーは見られない。お互い最後の力を振り絞って気持ちと気持ちをぶつけ合う。応援団も声をからしての声援が続く。しかし、その応援の声が悲鳴へと変わる瞬間が訪れてしまう。それまで三好の攻撃をことごとく跳ね返していた松蔭ディフェンスの足が、そのFKの瞬間だけ止まってしまう。三好のプレースキッカーの左足から放たれた正確なフリーキックが松蔭ゴール前に上がり、そこにピタリと合わせたボールが、無情にもゴールネットを揺らしてしまう。ネットに触れてからはスローモーションのようにスルスルとボールが地面へと落ちていった。一瞬の静寂、そして歓喜する三好イレブンと大応援団。
しかし、松蔭にも十分に時間は残されてる。延長の前半を折り返し、休憩を挟まず後半キックオフ。本当に最後の気力・体力・技術すべてを使い切り、攻める攻める、足が潰えてもゴールに届けとばかりに攻め続けるが、三好のゴールは遠く堅い。細かくつないで攻め込む松蔭を、三好がとにかくはじき出すという展開。しかし、ついにゴールを割ることはできず、主審の乾いたホイッスルの音が青空に響き渡り、激しい戦いの終了を告げる。

ピッチの内でもピッチの外でも崩れ落ちる松蔭の選手達。その現実を受け入れられない、いや受け入れたくないというのが本音か。仲間に抱きかかえられ、センターサークルで挨拶をすませると、鉛の靴でも履いたかのように足を引きずりながらベンチに引き上げてくる。三好の大応援団からは松蔭の健闘をたたえ大合唱でエールが贈られるが、おそらく選手の耳には届いていないだろう。センターラインを挟んで左側と右側、その光景はあまりにも違いすぎる。勝者と敗者、次に進む者とここで途絶えてしまった者、紙一重ではあっても、その差はあまりにも大きい。この結果によりサッカー部を引退する者もいる。
ただ、負けてはしまったものの、この瞬間に立ち会い、全員が一つになって戦ったことは紛れもない事実。勝利を信じて、仲間を信じて、あらん限りの力を出し尽くしたのだから、悔いてはいけない。そして、こんな素晴らしい舞台をともに作り上げた仲間との時間を忘れないで欲しい。残ってサッカーを続ける者も、引退する者も、松蔭サッカー部であったことを誇れるように。

松蔭サッカー部のインターハイは終わった。
切り替えて、リーグ戦、そして3年生にとっては最後の全国への挑戦になる選手権に向けて、また新しい戦いが始まる。悔いを残さないよう、頑張るだけ。立ち止まっている時間はない。

頑張れ松蔭高校サッカー部!

出場選手

松蔭 三好

三好との戦績

過去の対戦成績(2012年~2015年) 松蔭 2勝4敗1分

過去の対戦結果

2015/04/18 U-18サッカーリーグ愛知県1部第2節 ● 2-5 ○

2013/10/20 第92回全国高校サッカー選手権大会県大会3回戦 ● 1-1 ○

2013/09/14 U-18サッカーリーグ愛知県1部第15節 ● 0-1 ○

2013/07/14 愛知チャレンジリーグ(ACL)第6節 ○ 3-2 ●

2013/05/06 U-18サッカーリーグ愛知県1部第6節 ○ 2-0 ●

2012/10/27 第91回全国高校サッカー選手権大会県大会3回戦 ● 0-1 ○

2012/09/15 U-18サッカーリーグ愛知県1部第15節 △ 2-2 △

2012/06/16 U-18サッカーリーグ愛知県1部第6節 ○ 2-1 ●

全国高等学校総合体育大会 試合一覧

2015/05/23 3回戦 三好 ● 2-3 ○

2015/05/17 2回戦 富田 ○ 6-0 ●